十干の性情および日干と他干の関係ー戊(18)


▼ 字義

(説文)では中宮である。戊は茂にして、万物皆枝葉茂盛し、六甲五竜相拘絞する(六甲五竜――干支(えと)が60の組み合わせから成立していることは知られているが、その六十のなかに、「甲」がはいった組み合わせが六ある。すなわち、 甲子(きのえ ね)甲戌(きのえ いぬ)甲申(きのえ さる)甲午(きのえ うま)甲辰(きのえ たつ)甲寅(きのえ とら)これを〈六甲〉という。

さらに、この〈六甲〉のなかに、「辰」が五ある。出現順に記すと、 戊辰(つちのえ たつ)庚辰(かのえ たつ)壬辰(みずのえ たつ) 甲辰(きのえ たつ)丙辰(ひのえ たつ)これを〈五龍〉という。 「辰」は動物にあてはめると龍である。

龍は日本では略字の「竜」がつかわれるが、古い字体のほうが、いかめしいので、あえて「龍」でしるした。中国の簡化字では「?」。

〈五龍〉はそれぞれ色がちがい、守っている方角がべつべつである。

――戊辰の龍は黄龍、中央を守る。庚辰は白龍、西方を守る。壬辰は黒龍、北方を守る。甲辰は青龍、東方を守る。丙辰は赤龍、南方を守る。 東北のロシアとの国境の河は「黒龍江」と命名されているし、日本の横綱の名が「青龍」にちなむことなど、われわれの身近かに存在している。

「拘絞」(こうこう)はその五龍が、たがいにねじりあわさっていることである。たとえば正月の「しめなわ」のように。ここでは、〈五龍〉が〈六甲〉のなかに、しっかりと収(おさま)っていることをいっているのだろう。〈六甲〉によって〈五竜〉は管理されているともいえる。)を象る。戊は承けて人の脇を象る(「「戊」は丁を承(うけ)る」というのは、十干では「丁」のあとにでてくるということで、人の脇(わき)、つまり脇腹(わきばら)の象形文字)とあります。

(五行大義)では戊とは貿である。物の成長がすでに極まる・極まれば応になり、それまでの体を入れ替えるのは当然である。

▼ 性情

質は烈燥。性は耿介(こうかい 志を固守し世俗に迎合しない)、徳は信、色は黄、味は甘辛、声は剛勇、体は渋にして深、用は歯にして鹵(ろ 大型の盾 奪い取るの意)にして粗(耕作に適さぬ不毛の痩せ地)、時を得れば剛勇果敢、令を失えば柔懦癡愚(じゅうだちぐ 優柔不断で愚か)にして性執拗となり、矯正しがたい。天にあれば霧と陽光をければ、五色の光彩を発す。地にあれば高亢の山とし、城墻(じょうしょう 城垣)とし、根気があれば四気を調整し、特に堰堤となって水を整流する。。また甲疏水潤の適宜を得れば、山土もよく万物を育成する。

▼ 戊日から見る各干

甲木
偏官・陽干なので男児。女命には進取気慨のある夫。

戊の旺は四維(北(坎・子)、東(震・卯)、南(離・午)、西(兌・酉)を四方、北東(艮)、南東(巽)、南西(坤)、北西(乾)を四維)にあるので、厚土となれば、先に甲疏を用とし、丙暖と癸潤が調候となる。故に配合の適宜を得れば世表に顕出する。甲が用となれば己合を忌み、せっかく努力をしても功を他に奪われる。弱土の場合に木を多見しても従格にならねば、気慨があっても中途挫折か凶果を見るだけ。

乙木
正官・陰干なので女児・女命には柔和にして情は親しむが、節義に欠ける夫。

厚土を疏通する力はなく、赤心(嘘偽りのない心。真心)をもって事にあたるも、深憂がある。盛水に対しては草根凝土の作用があり、庚を見れば事が煩瑣となる。

丙火
偏印・陽干なので義母

調候の用として欠くべからざるもの。時を得れば生気煥発に質す。もし用の丙火が辛合を見る場合は行事渋滞の累がある。炎夏に丙を見て金水の滋潤がなければ、無用の焦土となるだけで、残疾が身にまつわるか、弧貧にして骨肉に刑尅を招く憂いがある。但し、信仰によって救いはあるが。

丁火
印綬・陰干なので嫡母。

高土を暖めるには力が弱く、大志を抱いても行動力が伴わず、ただ弧高に鬱屈するだけ。木尅大過の場合は生化となるが、自閉的な一面がある。もし庚金を併見すれば、適宜な施策によって衆望を担う。多金にみれを学秀の材となり、用の壬には病原となる。

戊土
比肩・陽干なので兄弟。

見弱には丙火を凌ぐ強力な扶助となるが、身強にみれば骨肉の不和を招き、弧愁の嘆きがある。もし制化なく更に重見すれば、羊質虎皮(ようしつこひ 中身は羊で、外観は虎の皮をかぶっていること。見かけ倒しで内容が伴わないことのたとえ。)の人にして、小利を貪り大財を失う。癸財の争合となれば、分裂的な行為が多く、家産の破耗を免れがたい。

己土
劫財・陰干なので姉妹。

見弱の場合、力不足にして作事に繁雑をきたし、深憂百出の象となる。身強には事を弁えず、やたらに虚勢を張り、また親蔭が薄い。甲木との合は吉凶の究明を要し、例えば、稼穡格(かしょくかく)の甲木は破局を招くが、己合は甲を土に化し、難事に直面して窮通の妙手を発揮できる。もし、甲が用の場合は却って自己開発の気力を欠くか、あるいは功を他に奪われる。

庚金
食神・陽干なので女命には男児。用となれば男命もまた同じ。

身旺には洩気の用。ただし、水を併見しなければ直情径行にして万事意に任せず、処世の法が拙劣である。もし水を見れば輾転(てんてん ころがること)流行して寿福の壮美を期待できる。特に強殺の制神となる場合は行動に中正を持し、子孫の栄秀を主る。弱土多金に火を見なければ、変節食言(前に言ったことと違うことを言ったりしたりすること。約束を破ること)の好意が多く落泊に終わる恐れがある。

辛金
傷官・陰干なので女命には女児。用となれば男命もまた同じ。

吐秀の用となるが、神経質な面があり、口舌の災禍を生じやすい。身強に見れば教職に異才を有し、更に壬水を併見すれば、晩景は悠々自適。弱土には大体忌気となり、丙暖を破る場合は丁制を要す。制殺の用としては力が足りず、性情に乖僻(かいへき 人に背いてまともでないこと。へそ曲がり)の難がある。

壬水
偏財・陽干なので父または婢僕。

解炎の用となり、燥土を潤す場合は、水清くして山高く行動端正である。さらに、甲木の疏通を見れば、大志を遂行し世人羨望の功を納める。旺水弱土の場合は質実性を失い射幸に奔命して閑恕を招く。

癸水 正財・陰干なので、正室。

冬期を除き、常に財慈の用となり、万物生成の徳を施すが、緊貼すれば密着の妻財として、志操行動を得る作用が働く。厳冬に見れば、生活能力を失い、女権に屈服する。もし強根(土)があるかまたは運程にそれを見れば、苦心中に好機をつかみ、更に丙暖を得れば雲梯を直上する。

戊日の用例 男命

戊 寅
癸 丑
戊 申
壬 子

丑月の戊土は凍結の寒土にして、丑中の癸財が透干するので正財格となる。壬癸申子が厳冬に遭うので、見弱財強の命である。年上の戊土は比助として強力だが、癸財を争合する点が面白くない。更に時柱壬子の緊貼が併せてこの命の病原となる。しかし暖土の用神寅中の丙火が空亡に落ちるのでは、開発精神はもちろん実直に働く意思など毛頭なく、勝手に職場を捨て賭事に日夜耽溺して、外泊連続、これで妻が他の男に関心を抱くのも当然。離婚の是非を占断するのも無理からぬ次第である。

戊日の用例 女命

甲 寅
甲 戌
戊 子
辛 酉

戊月中の予気辛金が透るので傷官格とし、二土に対し三木二金一水がある。これを較量すれば稍(しょう 少し・やや)見弱に属す命である。幸いに年月の寅戌が火を拱するので、戊土は暖と厚を得る。この高土を疏通する甲木が両見するが、一殺は辛金の制があるので清くなり、寅禄と子潤を得る。ただ辛金は制殺の用としては力が不足する。故に二殺尅身の作用を消去できず、夫の栄達にしたがって、病身となる暗示があり、かつ辛金の性が背くので夫命に服従しないきらいがある。

戊日の用例 男命

戊 子 己未
戊 午 庚申
戊 戌 辛酉
戊 午 壬戌

満局火土にして、子水は衰え午火が旺じるので、衰神が旺者を冲すれば、旺者激発して烈火となり、子水は瞬時に蒸発する。初運の己未は弧苦惨憺、庚申・辛酉運は戊土の情を引通して機会を得て富み、妻をめとって子をなし営業順調であるが、ひとたび戊戌運に交わるや、水は通根するも、戊土に塞がれ固禄に相、一家全員焼死する。もしこの命に庚か辛の何れか金が透るか、あるいは申か酉かの支を藏すれば、このような結果はあるまい。