十干の性情および日干と他干の関係ー乙(15)

▼ 字義
説文では春に草木が冤曲(えんきょく 曲がる)して出るを象る(かたちどる)。陰気なお強く乙乙として出る。一本棒と同意にして甲を承け(うけ)人の頸(くび)に象るとあります。五行大義では乙は軋(あつ)である。春時万物は皆孚甲(ふこう から)を解き、自ら抽軋して出るとあります。

▼ 性情
質は湿、性は曲、徳は親(したしむ)、色は碧、味は甘酸、声は婉転、体は柔軟にして党(むれ)を組み、用は無差(順序をかまわず勝手に首を出すとか、また必ず芽生えるとかの両意を兼ねる熟語)。時を得れば繁華にして令を失えば枯朽に至る。大体嬌柔(きょうじゅう なよなよとして柔らかい)を作用とし世情に依附(いふ 独立心がないこと)する。活木、湿草、藤蘿(とうら)、枝?(しかい)、花卉(かき)、禾本(かほん)また連根叢生(れんこんそうせい)の植物とし、粘着力と復元性があるも、細心にして執拗、進取りの気慨を欠き、責任転嫁を恥じぬ点がある。時には焦燥感にとらわれて静産できぬ面がある。

甲を日年、乙を月とし、また風とする。

▼ 乙日から見る各干

甲木
劫財・陽干なので兄弟にとる。

比助の力として強大。四時ともに依存できる。夏の暑さには樹陰となり、剛金に対抗の力を得る。泥水を吸収し、厚土を開墾するが、己土財星が用となる場合は妬争の恨みを生じ、妻財に異心耗散(裏切りの心を抱き、すり減って散り散りとなること)の患いを招く。甲が喜用となる時は藤羅繋甲と称し、乙木は堅木となり、また女命は賢夫に縁がある。

乙木
比肩・陰干なので姉妹にとる。

比助の力は微弱。むしろ神経過敏の煩いを招く。通根すれば叢生の草となり気力を得るが、戊財には対抗できず、己財には病となる。庚官を見れば争合となり、男命は功を他に奪われ、女命は一夫争奪の患いを招く。泥水に対しては吸収力が弱く、燃焼の力もまた弱い。

丙火
傷官・陽干なので女命には男児、喜用となれば男命もまた同じにとる。

四時ともに太陽の慈光となる。冬春に見れば行路の平坦を期待でき、夏秋にみれば大輪の花開き、また垂穂豊かに結ぶ。春夏に火気多見は体質虚燥となるが、癸水をみれば雨露の潤いを得て、生気を発す。丙火高照する時、癸水または辛金の近貼を忌む。

丁火
食神・陰干なので女命には女児。用となれば男命もまた同じになる。

厳冬は温室の火にして燃焼には甲と庚を要し、丁火だけでは外気に勝てず、湿草陰火は虚飾が多い。春は小輪の花となるが、陰土がなければ成果は期待できない。夏は禾本(かほん 稲)の開花とするが、いずれも雨沢または灌漑の水が必要。秋には制殺の美を施し、収穫の豊富を促進。

戊土
正財・陽干なので父または婢僕(下男下女)にとる。
旺水には堤防となり、培根の土壌となるが、単に亢土を見る場合は制御できない。故に甲木の疏通を要し、まさに気慨を示す。水木がなく湿土を多見すれば、従財の大器となる。水印木比のいずれを見ても破格となり、縮首恐妻の人にして閨恕(妻が夫と別れている悲しみ)を招く。

己土
偏財・陰干なので正妻ととる。
田園の土とし、陽火雨水の適宜を得れば、大才を発揮。春夏の盛水には田畴(田のうね)として盤根に資するが、秋冬の己土は大体不用のもの。但し亥月は水を遏めて(とどめて)藏干の甲木を引き出し、根気を堅くする。

庚金
陽干なので男児・女命には同化奉仕に値する賢夫正配有情。
その連繋は最も緊密。庚金に強根があれば丁火の錬成を見て益々美材となる。もし従化となれば火は不要のものにして内外に声明をあげる。再度捷撃を受ければ、分身の苦渋をなめ、乙比をみれば争合の憂いがある。

辛金
陰干なので女児にとり、女命には神経質にして内弁慶の夫。
偏官支にみれば埋根の鉄として生気っを傷つけるが、春夏に水源となれば用大。秋は干に透れば収穫の鎌となり、丁制癸潤を配合して大果を得る。冬期は結氷の媒体となるので、最も嫌う。

壬水
印綬。陽干なので義母にとる。
夏季は灌漑の水として勤勉によって成果を得るが、他期に盛水を見れば、冠水あるいは浮漂の患いに遭う。故に寅に通根するか、または制水の戊土を見れば、奮発向上の気が振作される。

癸水
偏印・陰干なので生母にとる。
凝寒の水は草根を腐朽させるので、冬期に盛水を見れば寿元を損なう。他期は不可欠の慈雨となる。労力を要する壬水と異なり、天与の水は遥かに育成の順調を促し、学芸に才能を発揮できる。故に用となる場合は戊己の阻害を嫌い、水源の金並びに火暖を得れば、禾稷(かしょく 稲科の草)は見事に開花結実し、五穀の豊穣を期待できる。

乙日の用例 女命
壬午  19 辛丑 29 庚子
壬寅  39 己亥 49 戊戌
乙卯  59 丁酉

乙木日主が寅月に生まれ、地支に東方の木を合成するので、曲直格となるが、時干の庚金がこれを破るのが惜しい。身旺を制するためにこの庚金官星を用ととる。年月干上の両壬が金気を盗んで身は寒くなる。年支にある午火は寒気を解く唯一の喜神であるが、大運は北方水地を行くので、火気衰えて夫縁の薄い命となる。

庚辰

乙日の用例 女命

丁亥 13 乙巳 23 丙午
甲辰 33 丁未 43 戊申
乙亥 53 己酉

乙木日主が春に生まれ地支に両亥および子の水、月干に甲木をみるので、身強である。月令の戊土正財が時干に透出するも身財を衡量すれば財星の力は大分劣る。故に年上の丁火食神を転枢(変化するための仕掛け)の用にとる。丁未運に入れば、火土好配に恵まれる。

戊子

乙日の用例 男命

丙子     庚子
辛丑
己亥     壬寅
癸卯
乙丑     甲辰
乙巳
壬午

天干の壬丙の尅、地支の子午の遥冲を見るので、向陽を喜ぶ寒木は水勢氾濫し火気尅絶して、名利ともに成らぬが如くにとれるが、これを子細に検討すれば、三水二土二火、水勢は旺じてもこれを生じる金のないのを喜ぶ。火はもとより休囚するが、土が幸い衛り即ち児はよく母を救う。天干の壬水は乙木を生じ、丙火は己土を生じ、各々門戸をたて、相生有情にして争尅の意がない。地支に北方の水を全備しても丑中の己土が透出し、時支の午に通根し相互に護衛する。故にその力は水を止め、火を衛に足るわけで、正に病があるも薬を得るものである。故に行運が寅になれば志を得て、青雲を直上する所以である。