十干の性情および日干と他干の関係ー辛(21)

▼字義

(説文)では秋時万物を成熟する。金剛にして味は辛。辛は痛にして即ち泣出(きゅうしゅつ)辛とは罪である。辛は庚を承けて人の股を象る。

(五行大義)では辛とは新である。万物生成して改更し新に復る。鄭去いわく「万物は皆粛然改更し、秀実新成するを謂う。

(異説)に鋭い刃物を象形文字にして、多くは刑具に用いられるもの。刃物で切れば鋭い痛みがあるので、辛辣の辛となる。即ち白虎通に辛は陰初めてなる。辛戸は殺傷する所以とある。またの説では、辛の上の立字は座標の象形。下の十は天柱を形どり、併せて天柱の立つところとある。

▼ 性情

質は尖鋭、性は柔中にして剛を持し、徳は義を尽くす。色は淡白 味は苦辛 声はりんりんと余韻のある金声 身体は沈静にして嚢中の錐のごとく、用は堅牢にして珠玉のごとし。時を得れば王錘(おうすい 祭器)となるが、時を失えば瓦礫となる。秋風を須って方に扶揺直上(旋風の如く巻きあがる意から官職の昇進・出世に転意)。静止すれば三秋温和の気としよく宗廟社稷(そうびょうしゃしょく 宗廟=祖先のみたまや。祖先の位牌を置く所。社稷=古代中国で、天子や諸侯が祭った土地の神(社)と五穀の神(稷)を守る。人界にあっては真金となり、白碧の玉とし、人を珍重するところとなるが、骨肉の縁薄く、利刃として鋭敏であるが、酷薄な面と利己的な面が錯綜して現われる。また偏向的に動いて自己を失う惧れもある。辛を人とする。

▼辛日から見る各干

甲木
正財・陽干なので父または婢僕。

喜用となるのは重土に逢うか金旺の場合に火根疏土に取るだけ。春夏に甲木を見て従格にならぬ者は妻子に無視される。特に木を多見して制がなければ、秀才であっても成果なく家風乱れて酒色に身を失う。厚土疏通の用になるとか、秋金に強木を見るとかは努力中に財を積む命。冬期の沈金に甲を見るのは窮境にあっても自適の楽しみ方を得る。

乙木
偏財・陰干なので正妻。

大体喜用としての働きが弱い。辛金が無根の乙木をみれば親の恩恵薄く兄弟も頼み難い。もし用となって壬癸の水をみれば卓幹(卓=一際ぬきんでている)の士にして財福豊かであるが、酷薄の面がある。多木の場合は色難が生じ、男女とも閨恕の嘆きがある。もし用の乙が庚兄をみれば、妻財の敗亡を招く。

丙火
正官・陽干なので子息。女命には干合有情の夫。

除寒暖金の用となれば奮発の気を生じ興家の命であるが、やや策を弄する嫌いがある。もしも祖恩をうければ持久できない。強金の制となる場合は合を貪るので、貴気を失い、性硬にして気亢(気持がおごりたかぶっていること)で口の悪いのが欠点となる。夏期の強火に制化の水土がなければ銷熔して夭折か孤貧の命である。二丙をみれば分身の苦悩があり、比肩を見れば争合となるので、特に女命は嫌う。

丁火
偏官・陰干なので女児。女命には気のそぐわない夫。

盛秋強金の制となれば、清貴を得る。氾濫する壬水に対しては一応水をけん制するが、美格ではない。凍寒の金を暖める用となるが、声あって形が伴わず巧中に拙があり、行路の屯難を免れない。しかし不遇の中に知己を得る。身弱に丁火多見は夭寿(若死に)か残疾の身。湿土か壬水の救応が切に必要。男女とも庚金を相配すれば大丈夫。

戊土
印綬・陽干なので偏母。

戊を高土とするので重々すれば深山の碧玉同様直ちに人界の用とならず、経綸を抱くも不遇をかこち、世間を白眼視する。もし甲木をみれば発掘され、営々大功を納める。但し乙木では美玉も光を失い、妻子を尅害して草芥(雑草とごみ。転じて、不要のもの。くず。)の野人に終わる。旺火を化す用となり更に湿潤が加われば卓幹の士であり、弄水の防堤となれば、蓄財大冨の命である。

己土
偏印・陰干なので生母。

卑湿の土とするが、壬水の滋潤を得れば私心なく剛柔調和の性にして事理常に明白。特に夏火を化し、生金の用となれば、難路も自ら切り開き栄光に浴す。更に庚金の匹偶(夫婦となること。配偶)を得れば、寿限を永くし、晩景優游(ばんけいゆうよう 晩年のんびりと心のままにするさま)にして子孫繁栄の象。もし忌神となれば事事自己顕示するも力量不足して効挙がらず。水を汚濁する場合が晩年貧困。

庚金
劫財・陽干なので兄弟朋友。

見弱には有用の扶助。春木多見に制となれば富貴双美の象。夏期の水源となれば同輩の援助によって社会上表の地歩を築き、妻子の賢良を得る。用の乙木に見る場合は妻財被奪によって傷心の患いがある。もし年月に庚金をみれば早年の孤苦多難は免れない。大体不要の庚金を見る者は、惰眠を貪りながら事の不成をぼやくか、あるいは下界の風波に翻弄される命。

辛金
比肩・陰干なので姉妹。

強土に辛比をみれば聡明の質。強木に辛比をみても弱志にして焦心多苦の命。身旺に辛比を見れば六親に情なく、壬水の透干をみれば暁倖によって自家創建するも、旧交を弊履(へいり 破れた履物。何の価値もないものの例え 弊履棄つるがごとき=破れた履物を捨てるように、何の未練もなく捨て去ることのたとえ。 )の如く顧みず専ら新を求めて信用を失いやすい。二辛一丙は争権の苦悩を生じ、二丙一辛は分力多苦の命にして、いずれも志行乖背の傾向がある。

壬水
傷官・陽干なので女命には男児。用となれば男命もまた同じ。

美玉淘洗(びぎょくとうせん 美玉=宝石 淘洗=土砂にまじっている砂金を洗う水のこと)の用水とし厳秋にみれば金白水清自ら英知流露し、福寿の万全を得る。もし丁合をければ陋巷の貧人になり、戊土が阻害する者は市井に飽食する庸人(ようじん 凡人のこと)満盤の水を見る場合は、気度寛宏にして功名崛起(こうみょうくっき にわかに事が起こること。また、多数の中から頭角を現すこと。)の佳格となる。夏金の壬水は身強には救応の威力を発揮するが、見弱の場合には暗疾に苦しむ命となる。寒金に壬水を見て従格とならぬ者は洩弱して多病多苦。もし戊丙の救応があれば名利双美を得る。

癸水
食神・陰干なので女命には女児。用となれば男命もまた同じ。

井泉(せいせん 井戸の水)雨露の水とするので 淘洗しても碧玉の光を発揮できない。夏金に湿潤の用となれば、こと志違うも小功を納める。もし壬を併見すれば優秀な大器である。冬期に癸水をみれば恩を施して怒りを買うごとき行為が多い。

辛日の用例 男命

癸 亥
24歳まで 乙卯34歳まで 甲寅

丁 巳
44歳まで 癸丑54歳まで 壬子

辛 卯

甲 午

日主辛金が巳月に生まれ、局中は財宮食神のみにして日主は無根なので、従勢格にとる。特に火勢が最も強く、年柱の干支がこれを冲衝するので、この間を融和する木星を用とし、水は火旺に逆らうので閑神、木火が喜神、我を生扶する土金が忌神となる。故に大運は東方木地がもっとも有利。特に火を藏し年月水火の冲を解く甲寅雲が最佳の地であり、この運中に僻村の張里先生もサイドワークの土地売買で斡旋で、思わぬ大金を手にしたのである。しかしこれが実の仇となり、本業をおろそかにして、相場の罫線に没頭。雲散霧消したのである。続く壬子運は時支を冲し、妻財の卯を刑するので、行路の災難はやむえない。幸い良妻に恵まれるを頼み、焦らず晩景清閑の杯中に過ごすべきであろう。

辛日の用例 男命

戊 辰
27歳まで 癸亥37歳まで 甲子

辛 酉
47歳まで 乙丑57歳まで 丙寅

辛 酉

己 丑

四土四金にして日主が両禄を得るので、強旺となる。ただ辰丑ともに含水の土なので、よく金を生じて従旺格とみる。大体土金二人同心の命は受気よりも泄気を喜ぶ。受気の場合は生気が我に及んで、家に籠るので大抵身勝手な行動をしやすい。これに反し泄気の場合即ち土金は我が秀気を外に発し、他を裨益(ひえき 助けとなり、役立つこと)すること多大である。特に清秋の珠玉は壬水の淘洗によって光芒を発すと古言にある。この命は辰丑に癸水を所蔵するのがよい。しかし、癸水は壬水の流露に力及ばない。土金の二人同心は育秀といい、教育関係に特能を有するが、果たして師範学校の出身でありながら、歯科医に?身したとの由。求占に来訪した妻は主人が現業を放擲し、相場師になると言ってきかず、今や夫婦関係の危機にあるが、もし相場に携わるのが適業なれば、この際診療所の開設資金を出した両親を説得して主人の言に従うとのことである。この命の忌神は木の妻財である。財を動かすよりも歯科技術を活かしてこそ蓄財できる故、無茶をしてはならぬと戒めて本業に精をだすように勧告したのである。