己
▼ 字義
(説文)では中宮にして万物辟藏(へきぞう 壁の中に塗りこめて保存する)の屈形を象る。己は戊を受けて人の腹を当てる。
(五行大義)では己とは紀である。物すでに始成にあれば条紀が備わる。整理の端緒にして即ち起である。屈曲のものが伸びる形とあります。
▼ 性情
質は博厚・性は広平にして充実。徳は順 色は淡黄 味は甘 声は婉曲 体は沈静 用は順柔。 時を得れば万物を陶化(善に導くこと)し、令を失うもまた質は堅貞を抱く。性寛にして物をに凝らない。天にあれば日輪の元気とし、雲となって雨を施し四気(木火金水)を調整する。地にあれば真土とし、沃田となり刑冲の開墾を見れば、五穀の豊穣を約束し、体質は堅固となる。人間にあれば城とし、基準を守って平穏を保持し、注意力の集中を得るが、一面機転が利かず、施策に渋滞をきたす。令を失うか、重土にして衝または洩がなければ愚鈍となる。
▼ 己日から見る各干
甲木
正官・陽干なので男児。女命には有情同化の夫。
強根の甲木をみれば、その尅を喜ぶ。厚戴して用となる場合は青雲に順路を得る。但し、甲木を多見すれば配主の林立となり、使命達成の去就に迷う。四季月に戊土の透出を見て、他に木を見なければ真化の土となり、抜山蓋世(ばっざんがいせい 山を引き抜き、意気は世全体をおおうほどである。力や気力の強大なことのたとえ)の大功を立てる。
乙木
偏官・陰干なので女児・女命には掘井して冽泉(れっつせん 冷たい水)を掬うべき夫。
乙木の尅は弱く、むしろ己土の滋扶を求めて植立できる。もし乙木が強根を得れば、志向するところは純粋となるが、志倣にして行動が粗忽に走る。乙木叢生して冬春の生まれは、従殺格となり困難を踏破して、興家に才腕を発揮する。秋月に木を多見すれば、乖癖の性が動き、火の赦神を見なければ無頼の徒となる。
丙火
正印・陽干なので義母にとるが、その適正な恩沢は資性の俊発(そのものがもっている優れて良質なところの発露)を促す。
夏期を除いて、常にその照暖を求め、更に適宜の雨潤を得れば、万物を慈育し、処生順調にして福禄の双美を得る。もし湿潤がなければ、旱田となり無為に日を送る。夏期の炎陽は水源がなければ烈土が亀裂し、性行ともに偏枯に堕し、弧苦零落の憂いを免れがたい。
丁火
偏印・陰干なので嫡母。偏愛のため心身の虚弱を招く。
強木の尅制には転枢となって、識才の卓抜を主る。強金の制となれば孤独貧苦を脱して、単身経営の良材となる。強壬には合の美を発し、波瀾を平定する。いずれも燃料甲木の見・不見が事の成否を左右する。夏期の丁火は禾木(かぼく 稲のような木・草)の虚花となりやすく、金水の湿潤を見なければ成果がない。冬土に丁火をみても病根を駆逐するには力が足りない。
戊土
劫財・陽干なので兄弟。
弱土にして泛水(はんすい)を見れば、防災の用土となる。もし癸財と併透し近貼すれば、妻財に異変を生じ、強土に戊土を見れば、過房(養子または庶子)の人である。何れにしろ戊土を見る時は財帛(ざいはく 財貨と不帛=布のこと)の雲散を主し、早年に労苦がある。特に忌神となれば六神の離散を招く。救慮の甲木を見れば自立して地歩を固め、更に水潤を見れば白手大財を握る。
己土
比肩・陰干なので姉妹。
弱土の命に金の滅気を多見する場合は、有用な扶助となるが、用の甲には一夫争奪の患いを招く。強土に己を多見すれば、兄弟姉妹が少ないか力とならず、遠慮が過ぎて他人に心底を疑われ、ともすれば吝嗇のため、チャンスを逸する惧れがある。もし動土の刑冲を見なければ、事が丁寧過ぎて、中途に挫折し、眼前の花を他に奪われやすい。季夏の土は高才を抱いても、世に顕れ難く、金を見れば稼穡格は真となり、晩年の福寿が厚い。
庚金
傷官・陽干なので女命には男児。用となれば男命もまた同じに取る。
春土には制木の用として病根を去り、燥強の土には水源となる時聡明の大器。大体土金傷官は教育関係に才能を発揮できるが、陰湿の弱土に庚金多見は盗気多大にして、事を処す作為が多く、狭量にして骨肉同輩と阻隔をきたす。もし丙火の温養を見れば、反生の功がある。丁火は制金力はあるが、燃料の甲木を要す。
辛金
食神・陰干なので女命には女児。
用となれば男命もまた同じに取る。三春の弱土に辛金多見は瓦礫の田となり、整地に労苦多く貧寒の命。旺木に対しては制殺力が足りず、万事に遅疑逡巡して自らチャンスを逃す。夏土に辛金が強ければ、詩想豊かにして人の師長となる。秋月には洩金の水あるいは制金の火を必要とし有能の材となる。冬期の辛金は丙火の温熱を奪って貧寒の度を増すだけ。
壬水
正財・陽干なので父または妾婢。
三春の弱土が泛水に逢えば、冠水流土となって病弱あるいは溺死の憂いがある。燥土に壬水を見るのは収穫に不屈の努力を要す。秋土に壬水は温暖の火か高堤の戊がなければ、玉を抱いて不遇に託つ。冬土に壬水を見れば、結氷の沼田にして弧苦貧寒の命。丙火に逢って弧苦を脱し、戊土を見れば貧寒を去る。
癸水
偏財・陰干なので正妻
冬土は湿泥凍結するので、癸水を不要とするが、もし癸水が満局すれば、従財の大器となる。破格の叱劫(しつごう)を見れば背井離散の象。冬期意外の癸水は慈雨として天恵の財となり、常時己土の霊を促し、更に丙照を見れば機略縦横の達人である。但し、丙癸が近貼すれば、両用を拘制し、晴雨不足の難を生じる。
己日の用例 女命
己 巳 17 丁卯 27 戊辰
丙 寅 37 己巳 47 庚午
己 未 57 辛未
己 巳
格局=寅中の丙火が月上の透出するので印綬格
強弱=寅月丙火司令の時、正気甲木の尅は火に化し、四火四土となるので大強となるが、但し春生まれなので従強格にはとれない。
用神=寅月の己土は余寒が残るので、丙火が調候用神となるが、地支に両巳火と未の燥土だけなので、これを春の早田という。故に、巳中の庚金を用にとるが、湿土がないので、用神としての働きが弱い。
喜神=庚辛、辰酉丑を喜ぶ。
忌神=争合となる甲・壬癸・亥子の水は争財を惹起するので嫌う。
三刑となる申もよくない。身の大強は父親の運気をそこなる。火気が強いので男性にも縁が薄い。兄弟も仲は悪くないが、力とならない。
己日の用例 男命
癸 未 19 甲寅 29 癸丑
乙 卯 39 壬子 49 辛亥
己 丑 59 庚戌 69 己酉
乙 亥
格局=月令卯木を中心に三合木局の七殺を成し、両乙が透干して、これを破る金気お明見しないので、従殺格が成立する。
難点を挙げれば、日支丑中の暗金と亥卯未の配列が逆(時支亥より尅水の丑土を間にして)となるところにある。
用神=木。旺神として取用。喜神=水木 忌神=火土金 ただし、天干の金は年上の癸水を化すので恐れない。
年干の癸水偏財を父親にとる。頗る有用であるが、未土の上にあって、丑土の遥冲を受けるので、よく働くが成果のない人である。年支を母にとれば、未は丑冲を受けるので、身体に障害がありそうに見てとれる。妻縁は癸水偏財の根は日支にあるので注意を持って娶れば悪くはないが、とかく女性関係のトラブルを生じやすい。子女は従殺格でもあり、時支に亥水を見るので賢良。
綜合=従殺格は自家創業よりも仕途の方が有利にして栄達も早い。特に年上の癸財は有用にして日支に通根するので、経済界に勇躍が期待できる。また四柱純陰は一種の清気となり悸背(きはい おどおどした)の行動がない。従殺は従財に比較して苦労が多いが、難局に直面しても捨て身の覚悟で奮闘すれば、自ら妙通の方途を得る。大運己酉の60歳前後は天・地ともに忌神となるので生涯の危機に見舞われるであろう。
己日用例 男命
己 酉 15 丙寅 25 乙丑
丁 卯 35 甲子 45 癸亥
己 卯 55 壬戌 65 辛酉
乙 丑 75
庚申
格局=月令の乙木が時干に透出するので偏官格。
強弱=木旺のとき陰火は熱量少なく、湿土を暖めることができず、年上の己土は酉金に洩れて比助の力はない。時支の丑土は卯木の尅をうけて根として弱い。故に中弱にとる。
用神=丁火 喜神=火土 忌神=水木 閑神=金(閑神. 喜神にも忌神にも、どちらともなり得る五行を閑神といいます。)
綜合=父の年干を己にとれば、少年時に家運を傾けて恩恵に薄く、母を丁日にとれば、愚痴多き女性。本人は虚土にして信少なく、丁火は湿草の上に立ち、しかも卯酉の冲があるので、神経質にして不安動揺多く、依頼心が頗る強い。その反面他人の不幸を喜ぶような心が動きやすい