十干の性情および日干と他干の関係ー丙(16)

▼ 字義

(説文)では南方に位し万物炳然(へいぜん 光り輝いている様)と成る。陰気初めて起こり、陽気まさに虧けん(かけん 抜ける・脱落する)とする。一に従い冂(けい)んい入る。(ケイ )国邑 (くにむら)の遠い界あるいは阿)に入る。三の字の会意(漢字の六書(りくしょ)の一。二つ以上の漢字を組み合わせ、その意味を合成して独立した文字とするもの。例えば「人」と「言」を合わせて「信」、「木」を三つ合わせて「森」を作る類。)一とは陽である。陽の功成って門に入る。冂とは天地陰陽の門である。乙に従い人の肩を象るとあります。

(五行大義)では丙と柄である。物の成長は各々その柄を執る。鄭玄(ていげん)曰く夏時の万物は強大。炳然として著らか(あきらか)にあらわれる。とあります。

▼ 性情
質は(  )、性は烈、徳は礼、色は赤紫、味は苦辣(くらつ)、声は蒼雄(荒々しくせっかち)、体は自存して健強、用は抑揚(ハーモニー)を主り、時を得れば輝光充溢きこうじゅいつ)。勢いに乗れば苛烈となる。水の制御を得て礼節を備え、令を失えば晦冥(かいめい)となる。大器といえど恒常性に欠け、転交(とりつぎ)には異常の才を発揮し、他の干犯を許さない。剛腹をもって自任するが、立ち居振る舞いは細心にして威儀を誇示する。日輪の慈光とし、洪炉(こうろ 天)の火とし、エネルギーとし、物を舒暢育成(じょちょういくせい)する力は大。陽気横溢し、快活にして決断力に富むが、持続性に欠けて多弁。端倪すべからざる変容を示し、恬然(てんぜん 平然としていること)たるところがある。

▼ 丙日からみる各干

丙火は極陽なので通根の寅・午・巳の一支を得れば、殆ど他の生助を求めず、また尅伐も恐れない。

甲木
偏印・陽干なので義母とし賢。

秋冬の転角(曲がり角)には生扶を頼み、四季は厚土を疎開して晦光を防ぎ、即ち親恩中正(親の恩は偏ることなく公平であること)にして自立精神を涵養。春の多木は遮光密林となるだけで、積学(学問をたくさん修めた人)の苦心も不発に終わる。炎夏に甲木を見て湿土の引化がなければ焚化して夭寿か孤児の命。

乙木
正印・陰干なので嫡母・慈育も溺愛に転じやすい。

生扶の力は甲より劣り、神気に不純を招く。春に多見すれば溺愛を受けて自立心を失う。猛暑は煩燥の病因となるが、盛水に遇えば行動に潤いが生じる。秋冬は生気の一助となるが、視野狭隘(しやきょうあい 視野が狭いこと)にして高踏(世俗を離れて気高く身を保っているさま)を気どり、しかも私利を計る傾向にある。

丙火
比肩・陽干なので兄弟。対立抗争の意濃厚。

天に二陽みれば、時に辛財を争合するので、男女ともに配偶と騒擾を惹起。三丙をみて通根刷る場合、制炎の水がなければ短命。残傷、見弱の培は骨肉と不仲なるも、他の援助によって小果を得る。但し、無根の虚火では顕達など望外。

丁火
偏財・陰干なので姉妹

単に丁火を見るのは煩燥を招くだけで不要。用の壬殺に?合(とごう 妬むこと)の累を生じ、女命は配偶者の異心に注意。男命は栄達の道を他に先取されやすい。また辛財の病となるが、剛金には制御の助力となる。

戊土
食神・陽干なので女命には男児。用となれば男命もまた同じ。生時に見る場合は恐ろしく不肖の息子である。

高山とし射光を掩蔽(えんへい 覆いかくす)するもの。戊土重見すれば資性愚頑となる。汪水(豊かにたたえられた水)制御の用となれば、槐任(かいにん 三公の役につくこと 三公は中国の官名。最高の地位にあって天子を補佐する三人。内容は時代によって変わり、周代では太師・太傅(たいふ)・太保)の材となり、火土偏燥は行動に悖背(はいはい 背くこと)が多く残疾(程度の軽い病気や故障)に苦しむ。

己土
傷官・陰干なので女命には女児。用となれば男命もまた同じ。

平地にして日光の普照(あまねく照らす)となり、洩秀の用となるが、重見すれば盗気(洩気)甚大にして行動に自律性を失う。夏期にみれば焦灼の土となり、成果がない。水旺には己土混濁して培木生火の用と自己確立と子女の福を得る。

庚金
偏財・陽干なので父または婢妻

旺木の制あるいは水源として用となれば、行動に格調を生じ、火金の両停(二つとどまること)は、鋳印といい経済に異才を発揮し、慷慨(憤り嘆くこと)の人となる。もし見弱にして強金を多見すれば、男女とも色情のため閨怨(けいえん 妻と夫が別れている恨み・嘆き)を招く。

辛金 正財・陰干なので正妻。

干合有情であるが、丙火は辛金をみれば怯むという。即ち辛に従って敵水に化すからである。その牽制力が頗る強く、配列如何によっては任務を忘れて、妻財に貧恋する傾向を萠す(きざす)。挟合する両辛を見れば分身の累が生じて動揺。二丙一辛の場合は争財の患いがある。

壬水
偏官・陽干なので男児。女命には共鳴できる夫星。

四時とし返照映光(光を照り返して、影・姿を映すこと)の水にして、旺火が盛水をみれば行動力を得るが、もし壬水を多見し戊土の制がなければ光棍(こうこん ならず者)の徒となる。但し、四季は厚土の水流を塞ぎ、晦光するのを嫌い、甲か庚の制化を得て清明を得る。

癸水
正官・陰干なので女児・女命には気苦労を要する夫にとる。

天干にあれば、雲となり、両光を掩蔽(えんぺい 蔽う)作用が強く、晴雨不定の形にして心性に暗翳(あんえい 暗いかげ)がよぎり、巧言令色が常となる。炎夏には壬水の涸渇を救って行動に和潤を加え、壬癸両透は戊合を見て顕出。丁が壬を合去すれば掩滞を招く。

丙日の用例 女命

乙 巳
丙 戌
丙 午
戊 戌

一見従旺格に似ているが、月令は戌の墓庫にして時干に戊土が透出するので、食神格にとる。しかるに命中に洩土の金を明見できず、また潤土の水根もないので、ただ火土乾燥の局となり、幼年は父を失い、夫子を尅す命となる。54才戊戌年に忌神が旺じ、前夫が後夫を制殺する難を惹起。子供は5人生んだが、次々夭逝し、最後に残った娘は精神分裂となり、62歳丙午の歳には、伏吟が災いして鉄路の錆(悪い結果)となり、晩年孤影の身の上である。

丙日の用例 女命

辛 巳
壬 辰
丙 申
癸 巳

辰中の癸水が時干に透出するので、正官格に取る。丙火が炎夏に近い辰月に生まれて年時の両禄に通根するので小強となる。故に水の制を喜ぶ命であるが、 天干に壬癸を並見するのは官殺混雑となり、嫁娘に苦情を生じやすい。従って、流年に良縁を得るわけである。丁未・戊申の両年がこれに該当するが、後者の戊土が癸官を合去し、壬殺が申に長生し、清栄を得る方が有利となるのは附言するまでもない。

丙日の用例 男命

丙 辰
丙 申
丙 申
庚 寅

時干の庚金偏財は年支辰土の生を受け、月日の両申に通根するので旺じる。日主丙火は年月の両比を見ても根は時支の一寅だけであり、しかも両申の冲に遭うので、頗る不安定で見弱となる。天干に三丙を見るものは、骨肉と不仲とあるが、事実その通りである。