十干の性情および日干と他干の関係ー壬(22)

▼ 字義

(説文)では北方に位し、陰極まって陽を生じる。故に易に曰く龍野に戦うと。戦とは接りであり人の懐妊の形を象る。亥を承けて、壬は子生まれの敍(じょ はじまり いとぐち)を以ってする。壬は坐と同意。壬は辛を承けて人の脛を象り脛は身体をになう。

(五行大義)では壬は任である。陰陽交わりて万物下に懐妊する。

(異説)に金文の形から見れば、梭(ひ)の中の心棒に糸を巻きつけた象にしてふくれる意ととる。

またの説では、壬癸を北方として、水に関する義にして、冬期農閑期に土木孤児を行う義があり、即ち水準を定め、四隅に杭を植えて縄をはる形と。また工事にして天地四正(子午卯酉也是四極位(子_水)(午_火)(卯_木)(酉_金)を直すため天柱を建てる百年の始めとし、工作の意とある。

▼ 性情

質は潤 性は淫 徳は智 色は黒 味は鹹(かん) 声は洪(こう 大きい) 身体は円滑 用は流通 時を得れば物を済え人を利すが、令を失えば賢を妨げて国の病となる。その性は柔険(じゅけん しなやか)にしてともに憂うるによいが、ともに楽しむことはできない。江河湖海の水とし、沿岸の万物を灌漑育成する。度量の寛宏を司り、才智豊かなるもやや依頼心強く怠慢の傾向がある。時には権謀術策に淫する嫌いがある。壬を河水とする。

▼ 壬日から見る各干

甲木
食神・陽干なので女命には男児。用となれば男命もまた同じ。

四季月(土用)には疏通の用とし緊要のもの。厚土に遇う場合に甲木があれば努力中に功を収める。強水に甲をみれば洩秀の用となり清明を司る。機略に優れ、その措置適正にして公明であるが、ただ骨肉との違和を防がねばならない。弱水の場合に甲木を見れば、大志を抱いて不遇の嘆きがある。特に春夏の多木は意思弱才か夭折の患いがある。ただ技芸に精進するところ小成を得る。

乙木
傷官・陰干なので女命には女児。用となれば男命もまた同じ

甲木に比較し水を吸収する力が弱い。ただし春水が木局の会成とともに乙木の透干をみれば、従児の真格となり、学術に精華(せいか そのものの本質・真髄)を発揮する。更に陽の財星を見る時は富貴双全を得る。乙を風とし水は風に逢えば揺れて波立ち、神経質な面が目立つ。もし弱水が乙木多見し、金制のない者は精神混沌、事に終始なく、六親と阻隔し、祖業を耗散する惧れがある。

丙火
偏財・陽干なので父または僕婢。

解凍の丙火を見る場合、光彩を発揮し廉直(れんちょく 心が清らかで私心のない人)の人である。快活大胆にしてしかも細心。巧言令色は許すところでなく、自らを恃んで百事難関を突破する気概がある。夏期渇水に丙火をみて救応の金水がなければ、中正を保し難い。妻害を免れない。もし従財の真格がなれば、却って閨財によって雲梯を直上する命となる。

丁火
正財・陰干なので正室。

干合有情にして密着の財であるが、火が強ければ妻財に貧恋しえ自己の志向する所を失いやすい。秋金を押さえる場合は妻の内助によって運途の平坦を得るが、二丁並透して分合となれば早年離卿、あるいは積力不果(せきりょくふか 力を蓄えることができないの意)の嘆きがある。これは盛春に生まれ化木格となる場合も同様である。ただし一事に専念すれば自立繁栄の緒を得る。

戊土
七殺・陽干なので男命には子息。女命には魅力ある夫。

雪解の水あるいは旺水に対し堤防として有用。古書に土が奔流の水を止めれば、福寿双全とある。用の戊土を見る命は、性剛にして胆大。士気軒昂にして作事に卒なく、出言は衆人を感動させる大器であるが、やや骨肉と親しまず独走する点が惜しい。

己土
正官・陰干なので男命には女児。女命には気苦労ある夫。

通根の強土であっても旺水を防ぐことはできない。但し印化(いんか 洩らすこと)をみれば聡明にして私心がなく、発言は率直にして毀誉にこだわらず自然活路を得る。ただし冬期の生まれは阻滞が多く、かつ妻財を尅す。弱土が水を濁して木を引化する場合は子孫の繁栄は得るが、行動が一貫せず早年は自ら艱難を招く傾向がある。もし水土重濁すれば田夫野人にして事の理非を弁ぜぬか偽君子である。

庚金
偏印・陽干なので偏母。

弱水の発源となれば、苦心中に活機を招き、異路に功名を得る。秋水に庚金をみれば汚流となり労して功のない命。もし制金の強火を得れば、市井に名利を納め、更に整流の戊堤かあるいは泄気の木を見れば特達の大器となる。

辛金
正印・陰干なので、正母。

清澄な水源となるが、ややもすれば理想を固持して平地に波瀾を起こす傾向がある。もし近貼の丙財をみれば母に難を生じるか、志向するところに混乱を招く恐れがある。夏期の沸水には雨沢を並見して優游(ゆうゆう)の進路を得る。

壬水
比肩・陽干なので兄弟。

春水に壬を並見すれば冲奔の水となり、見浅くして行動を誤りやすい。夏水に壬比を得れば、他力を借りて壬財の能を発揮。秋水は通源の長流となるが、沿岸の万物は枯稿(ここう 草が枯れてわらしべになること)の時、行動が無為に終わる惧れがある。冬水は潤下となるので、順流を喜び、西南を逆流すれば(水生木の流れが順流。金生水の流れが逆流 西南は申の方角)声のみ大にして成果は小。もし、砥柱の戊土を一見すれば守節済世(節度を守り、社会の弊害を取り除き、人民の苦難を救うこと)の志を抱く剛毅な人。

癸水
偏財・陰干なので姉妹。

春水には霖雨(りんう 何日も降り続く雨)となって弱志淫行の難を生じ、渇水の夏季にみれば天恵の援助に逢い、行路の平坦を司る。秋冬の癸水は祖業を破るか、せっかくの努力も水泡に帰する憂いがある。もし用の戊土合去すれば訳の分らない病(ノイローゼなど)に苦しむ。

壬日の用例 女命

丙 戌
19 丙申29 乙未

丁 酉
39 甲午49 癸巳

壬 子
59 壬辰69 辛卯

甲 辰 79 庚寅

格局=酉金が旺じ正印格

用神=壬水は酉金に通源を得た上、子辰の根があるので強水となる。故に整流のため年支の戊土を取りたいが、土気は酉金に洩れて用にはならない。やむを得ず旺気を引化する時上の甲木を用にとる。

喜神=暖水制金の火、堤防となる燥土を喜び、火を強くする木はもちろん良い。

忌神=泛水(はんすい)を助ける金水を忌む。

六親=年上の丙火が喜神となるので父は努力積財の人。母は酉金にとれば月令を得るが忌神にぞくするので、本人の我儘を助長するきらいがある。制水の土は体を失う上、配偶宮に子水を見るので、連れ合いを無視する性向が生じ、また夫は流土濁水の難があり、定心に欠けるのを否めない。時上の甲木が用神となるので、賢良の子女を得る。

性行=19歳までの丙申運は命運ともに丙火の根がなく、年月支と併せて申が西方の金を会し、日時の子辰を見るので、申は水局をも会成する。即ち、日主壬水は金水の生旺に併臨するので、冲奔横流(激しい流れにのまれたり、あふれたりすること)を免れない。この間はおそらく手に負えぬ不良化を見るであろうと推断できるが、事実高校1年にして妊娠中絶、中退するや町の無頼に堕し、少女にあるまじき行動毒物嚥下数回の自殺未遂等々。全く両親の心は休まる暇がなかったが、乙未南方運に入るや、たちまち行動は一変し、親の勧める先に嫁ぎ、現在は良妻と言える日常である。これは運程がよく命局を補救した好例といえよう。

壬日の用例 男命

戊 寅
23 甲子33 乙丑

壬 戌
43 丙寅53 丁卯

壬 午

丁 未

格局=従殺格。日干壬水は月上に比肩を見るが無根。支は寅午戌火局を得て、年上に通る七殺が旺じ(年上の戊戊壬の尅をいう)日主は依るものがないので、従殺格に取る。

用神=従格は本来その従うべきものを用に取るのが原則であるが、この命は比肩を合絆する時上の丁火を用とする。(丁壬干合のこと)

喜神=強殺を生扶する火土。

忌神=金気は殺を洩らし、身を生じるので特に嫌う。次に日主を助ける水。

閑神=木。七殺に逆らうが幸い印化する日があるので忌むことはない。

六親=従格は概して両親の恩恵に恵まれるのが普通である。忌神の印星を明見しないので、却って慈母の恩育が厚いと見る。月上に忌神の壬水比肩を見るので兄弟に難があり、かつ友人の選択に気を配る要がある。妻星が用となるので、良妻の力を得る。子女は従殺格にして時柱に乖背がないので賢良。

性行=33歳までの北方運は忌神に属すので苦労が多い。大体従殺の命は賢才が多く、本人は東大出身で目下財務官僚としてエリートコースにある。ただ30歳まではやや煮え切らぬ面が強い。

壬日の用例 男命

丙 戌
23 庚寅33 辛卯

戊 子
43 壬辰53 癸巳

壬 申

丁 未

格局=月刃格

用神=戊土。月の地支は日支申金の生扶を受けるので旺となる。それを制する戊土七殺は
戌未の両根および丙丁財の生を受けるが、惜しいことに戌土が空亡する(日主壬申の空亡は戌だから)点が難である。

喜神=木火土

忌神=金水

概評=冬至後に生まれるので、翌年の太歳を以って年柱とする。用神の戊土は年支戌が落空するので、根が弱く、14歳庚寅運に交入するや父を失い、17歳に出郷し、爾来転々職を変え、現在に至る。大体官殺が空亡する者は運命学に興味を抱く者が多く、かつそれを生業として身を立てることができる。しかし、旺水を堰き止める力が不足するので自己規制が難しい。この点を自覚しないとなかなか一業に定着できないであろう。