自然界の総てのものは五つの要素により構成されている。五行とは陰陽とともに東洋思想の根本を成すものである。木火土金水を五行という。天干の五行は日輪の運行によって変化する。これを動の気という。春は木、夏は火、秋は金、冬は水、土用は土の気によって代表される。地にある五行は陰の気とする。大地にも木火土金水があり、万物は土より出でて土に還る。ゆえに土は中央にあって司令の権を主る。
五行の性質
木 伸出 開発 緩舒 向上 施行
火 照明 炎熱 膨張 騰升 乾燥 熔化
土 調和 包蔵 保育 抑節 厚戴
金 緊縮 収斂 閉塞 更改 鎖殺
水 冷静 低下 凝集 湿潤 任養
十干を五行に当てはめれば次のようになる。
甲乙 - 木
丙丁 - 火
戊巳 - 土
庚辛 - 金
壬癸 - 水
十干五行の基本概念
木
甲木 陽木 樹木。大きく太い木。用材となる。
乙木 陰木 花、草、根、つたなどの湿木
火
丙火 陽火 太陽射光などの自然の光
丁火 陰火 灯火 炉火 焚火などの人工的な火
土
戊土 陽土 堤防 城塞などの乾いた土
己土 湿土 田畑などの湿泥(湿った土)
金
庚金 陽金 鉱石 斧 刀などの堅い金属
辛金 陰金 珠玉 砂金などの柔らかい金属
水
壬水 陽水 河川 湖沼などの大きな流れや利用するのに人力を必要とする水
癸水 陰水 雨露 井泉などの天然の水
生尅生化
世の中には扶けるものと尅すものがあって、初めて調和がとれるのである。植物を例に例えれば、種を蒔き、種が発芽して苗となり、根気よく栄養を与え続ければ、やがて花が咲き実を結ぶ。そしてこの実を取り、実を取り終わった植物は次に備えて刈り取る。このことによってまた来季に備えることができるのである。
種を蒔き栄養を与えることを相生といい、刈り取ることは尅であり制である。万物はこの制尅の調和がよければ進歩発展につながる。四時の運行も相生によって成立するが、生だけで尅あるいは制がなければ進歩はなく停滞する。尅とはいっても節を以て制し収納してこそ、次の発芽の気となる。つまり尅の作用が生の起因となる。
相生
木は火を生じる。火は木を燃やして土を生じる。土中には金属が埋蔵されているから金属を生じる。鉱石・石・砂礫の下には水がある。よって金は水を生じる。木→火→土→金→水→木と循環する。
相尅
木は土を尅す(木はよく土を耕して万物成長の元とする)火は金を尅す(火は金属を溶かしたり、鍛えて器を作る)土は水を尅す(土は水を制して万物を水の奔流からまもる)金は木を尅す(生い茂った木を刀や斧で伐採し土地を開く)水は火を尅す(水は暑さを和らげ、自然発火した火を納める)
制
制とは尅とほぼ同じ意味であるが、例えば木は金に尅されるが、自分にもし火を持っていれば火が先に金を制して、木を守ることができる。
化
化とは生の変容である。例えば木は金に尅されるが、水があれば水は金を化して、木を生じることができる。
五行の盛衰(旺相死囚休)
旺とは勢いが盛んで権力を主る時。
相とは漸時気力・体力を養い、次に備える時。
死とは絶滅の時であるが、回生の機を待つ時。
囚とは子から孫に権が移り、全く弱い時。
休とは精力が衰え、休養を取る時。
(木) 春は木が繁茂し、最も盛んな時となる。気候は夏に向かうために火は今のところは潜伏していても、力は木の次に強い。土は木に尅されて弱まり、金は旺木に向かって自ら刃が書ける。水は精力を使い切り、休養の時を迎えている。
(火) 夏は気温が上昇して、火気が最も盛んな時となる。土は火の生を受けて次に大きな力を持つ。金は火に尅され力を失い、水も同様に涸渇の状態である。木は先に活躍したので休養の時となる。
(土)? 土用に至れば土は極旺となる。金は土の生を得てこれに次ぐ。水は厚土に尅されて衰退し、木は土が堅く、しかも乾くために根を傷める。火は休養の時である。
(金) 秋は金気が当令して粛殺の気が強く、水はその生を受ける。木は金に尅され生気を失い、枝葉は枯れる。火は助けを失い衰退する。土は休養の時である。
(水)? 水は冷気にあたるため、冬に至ってますます旺じる。木はその生を受けて次代に備える。火は冷気によって力が衰え、土もまた旺水に力及ばず十分な働きができない。金は休養の時である。