十干の性情および日干と他干の関係ー庚(20)

▼ 字義
(説文)では西方に位し、庚は己を承けて人の臍(ほぞ)とする。

(五行大義)では庚は更である。万物成代(せいだい)して更改するをいう。庚はまた康であり堅強にして充実する形。即ち芯硬くして筋金いりの意がある。とあります。

▼ 性情

質は剛・性は急鋭。徳は義を持し、色は蒼白 味は辛辣 声は雄尖(ゆうせん)身体は硬直 用は粗暴 時を得れば専制を肆ままにし(ほしいまま)、令を失うも雄偉。剛をもって化すのはよくない。その性は堅持して人を屈服させるが、他に服従できない。剛金また斧斤(ふきん おの・まさかり)とし、林中に入ってよく葛藤を鋭断し活路を打開する。また金神粛殺(きんしんしゅくさつ 秋の厳しい気候が草木を枯らすこと。金神=庚)の気にして、物を良く収斂し、兵革(武器・よろい兜)の威を揮う。義のためには自己を忘れ、直截的であるが、無定見のところがあり、焦燥感にかられ、時には粗硬残忍に走る傾向がある。また自己主張が強く多弁である。

▼ 庚日から見る各干

甲木
偏財・陽干なので父または婢僕。

春に甲木を多見すれば缺金(けっきん 金が欠けること)となり、万事竜頭蛇尾にして、好色のため自ら破滅を招く。土金の生助があれば自家創建の人。夏期は大体甲木を不要とし、もし弱金にして制火の水がなければ、熔金となり、残傷をみるか夭折を免れがたい。秋期に強木をみれば慷慨の士にして経営の才優れ、更に丁火に高透すれば世人欣慕の大器となる。冬金には燃料となるが、火土がなければ才に溺れて善果を得ない。四季月には疏土に必需のもの即ち開拓の気の育成。

乙木
正財・陰干なので正室。

干合有情・同化して内助の妻財。春期にみれば妻家の財に浴して名利を得るが、乙木多見は志行に錯誤多く孤寡養子の命にして酒色亡身の惧れがある。他期の乙木は作用を見極め難いが、大体妻財に貪恋してチャンスを逸しやすい。

丙火
偏官・陽干なので男児・女命には包容力のある夫。

厳冬、春寒の丙火は暖金の用となり、資性清高にして惻隠の情厚く、異路(手法・方法が異なる事)に顕出(現われ出ること)の命。白秋の剛金には丁火と併透して行動中正となり名利(名誉と利益。また、それを求めようとする気持ち)裕助(助けとなること)の命となる。夏期の弱金に丙火を見れば、銷熔(しょうよう 熔けること)して奔波(ほんぱ 激しく寄せる波。また、勢いよく流れる水)夭折の命。

丁火
正官・陰干なので女児。女命には中正誠実な夫。

剛金には甲薪の生助、寒金には丙暖の扶助を見れば、よく錬成されて美器利刃(りじん よく切れる刃物)雲程直上の好命となる。もし両者の生助がなければ、俊秀なるも不果に終わるか、幼時不運。虚業に携わって小利を得る。大体夏期の庚金以外は丁火を良師とし、心性の霊動を掌り、無より有を生じる材となる。

戊土
偏印・陽干なので義母。

四季(辰戌丑未)に戊土をみれば、母の偏愛によって埋金の患いがある。従って依存心が強く、才能錬磨を怠り、人に圧伏されやすい。もし甲拓をみれば、奮発の気が起こり異境に名利をつかむ。春および炎夏の土は護身の用になるが、水火の調節が必要。

己土
正印・陰干なので嫡母。

甲疏あるいは丁錬に近接する卑土はその効用を奪うので嫌う。弱金生扶の用となれば資性聡明にして磊落なるも行動の敏捷を欠く。重土をみれば頑鈍の鉄となって融通性を失い、財耗多大を招く。特に女命は夫縁に薄く、子女不肖か病弱である。

庚金
比肩・陽干なので兄弟。

成林の甲木に対しては斧斤となって興家の偉材となり、更に丁火に引出すれば、秀気煥発して、富貴双全(富=豊かなこと 貴=地位・身分が高い この二つ両方)を招く。もし有根の一乙をみれば争合となり妻財によって災禍を惹起し、また六親疎遠の兆しがある。強金に庚を併見すれば志行乖離し孤苦零丁の命。ただし、金気満盤の場合は従革の貴格となり、義気溢れても直情径行の嫌いを生じ、父母に縁薄き命となる。

辛金
劫財・陰干なので姉妹

扶助の力弱く強木を栽制できない。用の財星にとっては病根となり、親蔭薄く心性笑裡に刃を蔵するの傾向がある。もし丙火が猩狂(ショウキョウ 火の勢いが強いさま)する場合は水制に代わって炎熱を引化するが自主精神に欠け、かつ小心にして感情の起伏甚だ多く、作事も曲折多大となり、栄辱(誉れと辱め。名誉と恥辱。)常ならぬ命となる。

壬水
食神・陽干なので女命には男児。用となれば男命もまた同じ。

炎夏にみれば淬励(さいれい 心をふるい起してものごとに励むこと)の用となり、俊英の偉材となるが、丁煉が高透する剛金にとっては忌神となり、積年の功を他事によって破りやすい。白秋の剛金に壬水をみるのは技芸卓抜なるも苦心多大である。厳寒にみれば沈金となり、玉を抱いて不遇を託つ。もし戊制をみれば小功の人。

癸水
傷官・陰干なので女命には女児。用となれば男命もまた同じ。

消炎潤金の用となれば詩操豊かなるも神経質な面がある。また木を見て生財の用となれば、経済に手腕をふるい、子孫の栄秀を司る。旺金に無根の水をみても行動に汚濁を生じるだけ。もし用の丁火を消滅する場合は下賤となる。冬期に木火の温暖がないか、戊制を見なければ孤苦に悩み、かつ頭部に傷害を受けるか淫邪の命。

庚日の用例 男命

庚 子
13 丙戌23 丁亥

乙 酉
33 戊子43 己丑

庚 申
53 庚寅63 辛卯

庚 辰 73 壬辰

格局=井欄叉格の仮格。庚子、庚申の何れかを生日に見て命中に申子辰の三支水局を全備するものをとる。(井欄とは井桁、叉とは三合をさす)従って、この命は適合するわけである。ただ月上の乙木が合化し、金になっても争合を惹起する点が瑕疵となる。

用神=子水。剛金の吐秀にとる。

喜神=金水を喜ぶ。普通井欄叉格は傷官が用となるので、寅卯東方財地に行くのを喜ぶとされているが、この命は争合の素因である乙木が根を得るので木は忌神となる。

忌神=古書には壬癸(あるいは丙丁)巳午を忌むとあるが、前記のとおりに忌むものは木火土となり、壬癸は喜神と替わる。

推測=変格が形成される場合、その象に欠陥があれば仮格とし、出身に故障を生じる傾向のある事は古来説かれているところである。その観点に立ってこの命を推測すれば次のような見方ができる。

(1) 年上の庚金と月上の乙木がこの命式の病所となる。故にこの宮位を親友および兄弟に当てるので、必ず六親関係において問題があるわけで、第一の点は、父はおそらく養子であり、しかもこの子が4歳の癸卯年に別離し、他に腹違いの兄弟がいるであろう。なぜかなれば、乙木財星(父星にとり)は卯に建禄し、月垣を冲して背くからである。また年月干が合化して比劫になれば異腹の昆季を見ると古説にある。事実その通りであった。

(2)次に右の病所は健康面でもまた病所となる。幼時より腺病質であろうと推察できる。即ち庚が病となれば、大腸弱く気管系統に故障が起きる。乙が病となれば、肝臓に欠陥を生じ、弱視あるいは眼疾を招く。金が旺相の場合 呼吸器系疾患(ぜん息など)乙・甲(木)肝臓・眼疾・頭痛など

庚日の用例 男命

辛 巳
15 己亥 25 戊戌

庚 子 35 丁酉

庚 子

己 卯

格局=子水傷官を格に取る。

用神=庚金子月生まれは洩気休囚の地である。干上に印比劫の生扶を見るが皆根がないので中弱となる。冬令の金水傷官は寒金凍水の惧れがあるので、まずこれを暖めるために巳中の丙火を調候にとり、旺水を吸収する卯木を用に取る。

喜神=木火土を喜ぶ。忌神=寒金水冷の時旺水を見れば金は沈み、水は金をみれば結氷となるので嫌う。

結論=丁酉運己酉歳、3月に腎臓結核で死亡。年支巳は空亡であって、調候としては力が弱く、酉を見れば金局を形成して火力は皆無となる。また旺水を吸収する卯木は酉金に冲去され金寒凍水を促して死没したのである。

庚日の用例 男命

丙 申
14 癸巳24 甲午
壬 辰
34 乙未44 丙申
庚 申
54 丁酉64 戊戌
甲 申
74 己亥

格局=辰中の戊土偏印を格にとる。

用神=庚金が辰月土旺に生まれ、年日時支に三禄をみるので身強となる。故に先に厚土を疎開するために甲木を用に取り、次に庚金を錬冶するために丁火が欲しいが、命中にないので、洩金の壬水を用にとる。

喜神=水木火 忌神=土金

総合=丙・壬・甲とも辰月に遭うので力がある。故に処世は緩急適宜を得て小貴小冨の命となるが、大運丁酉中の戊戌年は一命を保しがたい危険がある。