天干と地支五行の性質と機能ー火行(08)

2.火行

始元
南方に陽極まって熱を生じ、熱は火を生じます。


太陽に属し炎上します。


積陽(集まり積もった陽)の熱気が火となります。火は外明なるも内は暗い。故に外陽にして内は陰。


熾烈(しれつ)にして万物を熔化します。


火は礼とし、斉(ととのう ひとしくする)とし、平とします。故に衡(こう 平らか、つり合いがとれている)炎陽の令を施し、成斉(平らかにすること)の権を持し、果断威厳(思い切りよくおごそかなこと)を盛徳(高く優れた徳)とします。

作用
万物を燃焼し急速にその質を変化させる力、即ち炎熱・膨張(万物は熱気に遇えば膨張し、更に火に化せば益々膨張して炎上する)乾燥(物を乾燥する力があり、過ぎれば物は枯死する)旺盛(生気を振作(ふるい起こす 盛んにする)し、その性能を極点まで向上発展させる力)熔化(火気は頑剛の物を軟化し形質を変化させる)等の作用があります。

効用
土を温めて生発の力を促し、金を熔かし鍛えます。水を暖かくして寒冷を除きます。また沸騰蒸発させます。木を育成し果実を成らせます。

干支
天干は丙丁 地支は巳午その他寅未戌中にも火が暗藏されています。

生尅
木は生を受け土を生じ、水に尅されて金を尅します。

五色
赤 五臓 心 五腑 小腸 五根 舌 五主 血脈 五味 苦み

(1) 火の種類

▼強火
時令(旺相)を得て生助の多いもの。金の分力 水の相済 土の吐秀を喜び、火の再加、木の生を忌む。

▽弱火
失令(休囚死)して生助のないもの。木の生、火の比助を喜び、分力の金、消火の水、晦光(かいこう)の土を忌む。

▼燻火
木を多見すれば火は燻ります。割木の金、坑木の土、比助の火を喜び、生木の水、再加の木を忌む。

▼晦火
土を多見すれば火は晦くなります。(くらくなります)。制土生火の木、洩土(せつど)の金を喜び、消火の水、再加の土を忌み、比助の火をまた忌みます。

▼熄火
(そくか)金を多見すれば火は熄えます。比助の火を喜び、生木の木は力となりません。生金の土、再加の金、消火の水を忌む。

▼滅火
水を多見すれば火は消滅します。尅を化し生となる木を喜ぶ。水を制する土は燥土なれば良好。比助の火は力とならず、金水はいずれも忌む。

(2)四時の喜忌


春は相令(母旺じ子相にして木火通明)

寅月
三陽開泰(春が巡って来て、万物の生気が満ち溢れるという意味。冬至の日に「一陽」が生じ、旧暦12月に「二陽」が生じ、正月には「三陽」が生じて「開泰する」(万物が通じる)と言われるのです。)のとき 炎威次第に伸びるが、木を制する金が欲しい

卯月
火は中天に輝いて大地を普照するが、木を制する金が必要。

辰月
火勢はいよいよ強くなるが、晦光の土を開く木を必要とします。

右三月に生まれる火にとって 五行は次のように働きます。


寅卯の両月は木を多見すれば、燻火となり、夭折(ようせつ)か終生自立の志を欠くかです。辰月は生気の木を見るのを喜びます。


三春(寅卯辰)の火は同気を重見すれば性質急燥となるので水の沾恩(てんおん 潤うこと)を喜ぶ。


秀気をよく洩らすのでよいが、辰月に多見すれば盗気となり自存の念を失う。


春火は金を喜ぶ。功を施して財豊か。多金を見ても才能発揮の命。ただ月の火が重金に遇えば小技弄巧(たくらみが多い)の人となります。


寅月に重水を見れば発火の能を失います。卯月は精神不安 辰月は恩沢(や物に利益や幸いをもたらすこと。また、そのもの。おかげ。恵み。恩恵)に恵まれる。


夏は旺令(勢威嚇嚇にして権を掌握し、夏天に炎上の象)

巳月
炎々たる火勢は烈燥の性を招く。適度に水を見れば炎威を解いて礼を施す。

午月
旱天焦地(ひでりで土地が乾燥する様)の時。水を求めることは前月に同じ。ただ土が水を防ぐのを恐れます。

未月
三伏(夏の最も暑い時期。夏至後の第3の庚(かのえ)の日を初伏、第4の庚の日を中伏、立秋後の最初の庚の日を末伏といい、この三つをあわせていう)寒を生じ、炎威やや衰えるとき。まだ地熱が熱いので、水木の両用
を喜びます。

右三月にうまれる火にとっての五行の働きは次の通りです。


巳午の両月に木を見れば炎威烈燥を増すだけで、自焚夭折の患いを招く。未月には必要。


三夏の火が更に同気を見れば、性急燥を招くだけで孤貧か僧道の命


夏火に嫉土を見れば稼穡(種を実らせ、収穫する)の功を施すが、燥土では亀裂を生じるだけで僧道の命


火錬鋳金(かれんちゅうきん)といい、重金を見れば巨富。但し湿土が必要。


焚滅の患いを払い、礼を守って功を発揮しますが、滴水では竜頭蛇尾に終わる


秋は囚令(日は西に傾く時 性体ともに休息にはいる。

申月
陽気いよいよ衰え、陰気長生のとき。土を見れば光を失うので木を必要とします。(火の力を強める)

酉月
日は西山に落ちて余光が空に映えるだけの虚火です。木を見れば復明の歓びを得ます

戌月
庫地に入り陰気深く火勢いよいよ微弱となるので、晦光の土を嫌い疏土の木を最も喜びます

(三秋の火にとって五行の働きは次の通りです。)


秋火は木を見れば、復明の歓びを得る。金気強ければ風前の灯となります。


申酉の両月は重見の火を喜びます。即ち光輝を増し功を施します。


秋火が土を見れば光を掩(おおう)ので、才能を発揮できない。


火気衰える時金を多見すれば縮頭の人か河東獅吼(凶暴で猛々しく、まるで獅子が発狂したように吼発し、かんしゃく玉を破裂したように騒ぎ立てる女性が{河東地方}に住んでいて、その吼声が遠くまで響き渡った、との故事からきている。)の悪妻の累(るい 禍)があります。


衰火が水を見れば、災害を招くか湮滅の禍があるかです。


冬火は死令(体絶して形を亡くす象)

亥月
小陽春といえども光芒絶滅の時です。干上に木が透れば復明の力を得ます。

子月
火は至弱の期です。木を欲すること切です。

丑月
大気は二陽に進んでも凍土が加熱を盗むので、これを阻止する木が必要です。

(三冬の火に対する五行の働きは次の通りです。


救応の神です。復明のの力を促進します。


火の比助を見れば同気によって万事有利に展開します。


制水の用となれば、栄光を確保できるが、尅洩(こくえい)交加(こうか)(尅したり洩らしたりが同時にくること)となれば連苦を招く。ただ、子の福を得る。


生水の金をみれば妻財によって災害を招く。もし命中に木があれば光輝を増す用となるので喜ぶ。


ただ災禍を招くだけ。