運命と四柱推命術

運命と四柱推命術

運命とは己が好むと好まざるとに拘らず、自分の意思が百パーセント働くことはない。つまり、親が子供を産んでも、自分の思い通りの子供ができないのと同じことである。どの時期にどのような家に生まれるというようなことは全く当人のあずかり知らないことであり、生家が豊かであるか貧しくあるかなど、誰ひとりとして選別することはできない。所用のためキャンセルした飛行機が墜落し命拾いをする人もいれば、その飛行機にキャンセルが出て運よく乗れたと思っていたら命を落してしまった人、あるいは時の花形産業に就職したと思いきや、その会社は時代の流れとともに衰退し、リストラの憂き目にあう人、会社ではうだつが上がらなかったが、独立して商売を始めて思わぬ成功を手中にした人などなど、このような例は数え上げればきりがない。

成功者と失敗者の実力には結果ほど大きな実力の差があるとは思えない。むしろ運の左右する力の方が大きいのではあるまいか。自分の意志で人生のかじ取りをしているつもりがそうではなく、目に見えない糸によって動かされているのが人生である。とはいえ、全く己が意思を働かせることができないかといえば、そうとばかりは言えない。己が意思によって左右できることもある。例えば就職先、結婚の相手、交友など人生にはいろいろな選択があり、この選択如何によって数パーセントは運命に変化がでる。

人の運命行路を道路に例えてみれば、運の良い人は平坦な舗装された道路を目の前に生まれ、運の悪い人はデコボコの曲りくねった道を前に生まれたといえる。しかし、いくら運が良く生まれても選択を間違えれば、道を外れることもあろうし、運が悪く生まれた人であっても、思わぬ道草を食うことはあっても、選択を間違えなければ、行き逢う人々の導きにより、苦労はあってもいい人生を歩むことができる。運命とは元来神の領域である。強い意志と弛みない研究心を持つ人だけがこの道を踏み分け進むことができる。

四柱推命術は推命学、命理学、あるいは子平術ともいわれる。人間の出生の時、即ち日月、寒暖、春夏秋冬、陰陽、自然の気を受け、各人はそれぞれその気を転移したものである。したがって人の命も自然の運行に左右される。よく宿命という言葉を聞くが、各人の出生の事実は当人ではどうすることもできないものであり、そのどうにもならない出生を主体とした四柱推命は運命的と言われるのである。しかし推命術に限らず、すべての占術は人間の考え出したものである。これによって先を知ることもできれば、知ることによって災いを未然に防ぐことも可能である。物事を早く知るかそれとも全く知らずにいるかの違いで人生は大難、小難、無難ともなりえる。己が器量を早めに熟知し、それに基づいて人生行路を進むことが最良の策と言えるのではないだろうか。

推命術の歴史に触れておきたいと思う。推命術は今から二千三百年前、中国春秋時代に鬼谷子(きこくし)によって創設されたことになっているが、はっきりとしたことは分からない。後に漢の時代になり五行(木火土金水)観が明確になり、五代の時に除子平(じょしへい)が「淵海子平」(えんかいしへい)を著し、生日を自己と定める推命術の基礎が確立された。その明の時代に劉伯温(りゅうはくおん)が出て「滴天膸」(てきてんずい)を著し、今日の四柱推命の鑑命法が確立された。更に時代が下って徐楽吾(じょらくご)によってこの鑑命法が強化され現在に至るのである。

我が国においては、江戸時代仙台藩の儒者である桜田虎門氏によって推命術が紹介され、伊藤耕月山岸乾斎などによって世に広められた。しかし、これはいずれも神殺(命中にもつ吉神、悪神)を主とするものであり、現在の推命術につながる鑑定法は京都の阿部泰山氏の出現を待たなければならなかった。阿部泰山氏の鑑定法は非常に高度で極めて困難であり、この道を追求する者が少ないのは非常に残念なことといえる。

では四柱推命術で何を知ることができるのか

1.出身・家柄

親または先祖からの恩恵の厚いか薄いかを知ることができる。

2.六親(りくしん)の状態

六親とは本人・父母・妻(夫)・子供・兄弟をいい、状態とは当人に対してどのような形で働きかけているか、つまり良い父母であるか、良い妻(夫)であるかなどを知ることができる。

3.性格・相性

本人がどのような個性・適性の持ち主で、どのような長所・短所があるか、どこをどのように伸ばしていけばいいのかを知ることができる。 また相性の良し悪しも知ることができる。

4.適業

正確や環境が仕事の適・不適また、好き嫌いを決める。長所が表面にはっきり表れている人は適職も分かりやすいが、潜在している場合は指摘が困難である。

5.財

人には生まれながらに財に恵まれている人と、いくら努力しても財に縁のない人がいるが、運の強弱によって変わってくる。強運の人は財を保持できるが、弱運の人は巨万の富といえども保持しがたい。反対に財は弱くても運勢が強ければ、巨万の富には及ぶべくがなくとも不自由なく生活していくことができる。

6.寿元(健康と病)

特別に頑健な人を除き、各人にはそれぞれ弱いところがあり、この弱い所が表面に現れた時に病となる。己が弱いところを事前に知り、早めに対処することによって、病から逃れることも可能である。