五行大義(十干十二支)

十干

「詩緯推度災」には「は押である。春になると開き、冬になると閉じる。」とある。鄭玄は「礼記」月令の注釈の中で「甲は押である。」と言っている。

は軋である。春になると万物はみな殻をやぶって自分できしみながら抜け出る。丙は炳である。ものが生長するとそれぞれが四方に広がって行く。

鄭玄は「は炳である。夏の時には万物は強大になりはっきりと形をあらわすのである。」と説いている。

は亭である。あたかもひとところにじっと止まっているようなものである。ものが生長するとある時期に止まろうとするようなものである。

は貿である。生長がすでに極まり、極まればそれまでの体を入れ替えるのが当然である。

は紀である。ものが始めて成就した時には筋道があるのである。

鄭玄は「とは茂である。己とは起である。万物はみな枝葉を茂らせ盛んになり、その中でも秀でたものは抑えつけられても起きてくるものである。」と言っている。

は更である。辛は新である。万物が生長して代わり、また新しく生まれ変わることである。鄭玄は「万物はみな縮んで改まり、優れた実が新たにできることを言う。」と言っている。

は任である。

は揆である。陰は陽を内側に抱え込み、筋道を立てて萌芽させる。鄭玄は「その時には万物を閉ざして地中に懐きはらみ、筋道を立てて萌芽させる。」と言っている。

  • 甲は押:押とは「押さえて封じる」といった意味である。
  • 鄭玄:「じょうげん」と読む。「周易」、「尚書」、「毛詩」、「儀礼」、「礼記」、「論語」、「孝経」、「尚書大伝」、「緯書」などの注釈を書いた。
  • 乙は軋:軋とは「ものが擦れ合う」といった意味である。
  • 丙は炳:炳とは「器物の取っ手」という意味である。ここではあまりはっきりとは訳していない。
  • 丁は亭:亭とは「止まる」といった意味である。
  • 戊は貿:貿とは「交換する」といった意味である。
  • 己は紀:紀とは「筋道」といった意味である。
  • 庚は更:更とは「代わる」といった意味である。
  • 辛は新:新とは「新しい」といった意味である。
  • 壬は任:任とは「はらむ」といった意味である。
  • 癸は揆:揆とは「計る」といった意味である。

十二支

は孳である。陽気が動き出し、万物は繁殖を始める。三礼義宗には「陽気がやってきて繁殖し始める」とある。

は紐である。紐は繋(けい/つなぐ)である。芽生えを続けさせて生長するのを縛ってしまうのである。だから「子で繁殖し始めて丑で芽を縛ってしまう。」というのである。三礼義宗には「そのように言うのは終始の時にいるので紐で結ぶことをもって名とする。」とある。

は移である。また引(いん/ひく)とも言う。ものが芽生え、ようやく芽が出ると引き出してこれを伸ばし大地から移すことである。淮南子には「寅は動き始めることで生じる。」とある。三礼義宗には「寅は引であり、伸ばし建てるという意味である。」とある。

は冒である。ものが生長して大きくなり地面を覆い隠すことである。淮南子には「卯は茂ることである。」とある。三礼義宗には「卯は茂ることである。陽気がここに至ってものを生じさせ、ますます茂る。」とある。

は震である。震い動いてもとの体を抜け出ることである。三礼義宗には「この月(旧暦三月)の時にはすべてのものが震い動いて生長する。」とある。

は已である。古い体を洗い去ることである。ここに至ってすでに竟(お)わる。三礼義宗には「巳は起である。ものはこの時(旧暦四月)になってことごとく尽きて、しかる後に起こる。」とある。

は?である。また、萼(がく/噛み合う)と言う。仲夏の月(旧暦五月)に万物は盛大になり、枝が入り交じって盛んに伸びる。淮南子には「午は忤(ご/さからう)である。」とある。三礼義宗には「杵は長くなり、大きくなることである。万物が皆生長することを明らかにする。」とある。

は昧である。陰の気がすでに大きくなり、万物はだんだん衰え、体が曖昧になってくる。したがって未に曖昧というのである。淮南子には「未は味である。」とある。三礼義宗には「この時(旧暦六月)には万物が成熟に向かい、においと味がある。」とある。

は伸である。伸はあたかも引くようなものであり、長ずることである。衰え老いて成熟するのである。淮南子には「申は呻(うめく)である。」とある。三礼義宗には「申は身である。万物がみな成就するのである。」とある。

は老である。また、熟と言う。万物は老い極まって成熟するのである。淮南子には「酉は飽である。」とある。三礼義宗には「酉は猶である。老熟した類を意味する。この時、万物は縮小して成熟するのである。」とある。

は滅であり殺である。九月(旧暦)に殺が極まって万物はみな滅ぶ。三礼義宗には「この時、万物は衰え、滅するのである。」とある。

は核であり、?である。十月(旧暦)に万物を閉じこめ蔵(おさ)めてみな種の中に入る。三礼義宗には「亥は劾である。陰気が万物を行き詰まらせて殺すことを言うのである。」とある。

  • 子は孳:孳とは「産む、茂る」といった意味である。
  • 三礼義宗:調査中…丑は紐:紐とは「紐で縛る」といった意味である。
  • 寅は移:移とは「移す」といった意味である。
  • 淮南子:前漢の淮南王劉安の撰、高誘の注で全二十一巻から成る。古今の治乱、吉凶禍福、自然現象、人事界の稀異な現象などを多く網羅している一種の百科全書である。思想的には多種多様で統一を欠く。
  • 卯は冒:冒とは「覆い隠す」といった意味である。
  • 辰は震:震とは「震う」といった意味である。
  • 巳は已:已とは「止める」といった意味である。
  • 未は昧:昧とは「暗い」といった意味である。
  • 申は伸:伸とは「伸びる」といった意味である。
  • 酉は老:老とは「老いる」といった意味である。
  • 戌は滅:滅とは「滅びる」といった意味である。
  • 亥は核:核とは「芯」といった意味である。